出力10mWで50.620MHzに固定したAMトランシーバーの作製

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アマチュア無線で使われるモードは、AM(振幅変調)、SSB(振幅変調単側帯抑圧搬送波)、FM(周波数変調)、CW(電信)等があり、作製したAM機は、唯一50MHz帯で運用されている。しかし、近年は50MHz帯の愛好者間でロールコールが行われている程度で、CQを出してもほとんど応答がなく、ロールコール以外では交信が難しいモードと化してしまった。

AMは振幅変調で、送信した音声によって基準となる周波数の搬送波の振幅を変化させ変調信号を伝送するもので、FMに比べると狭い周波数帯域幅(6KHz)で音声が送れる。しかし、ノイズに弱いことや音質が若干落ちる弱点がある。

作製したAM機は、以前、高橋OM(JH1EMH)がCQ誌に投稿されたもので、ポケトラを基本に作製されており、同調回路の調整と、ゲイン調整のみで作動する回路であることから、種々に改良を加えられて作製されたものであることが推測できる。言うまでもないが、パーツなどを変更すれば、カット&トライが必須になる。

今回は、送受信回路はほとんど変更なく作製したが、12V電圧でも利用できるように、電源回路に9Vの三端子レギュレターを追加した。また、AFボリュームとPOWERスイッチを切り離した。さらに、Sメーターにランプを付け、ON OFF用のプッシュスイッチを設けた。

1、ブロック線図

受信部は、高周波増幅に2SK61-Yを使用し、局部発振に2SK19-GRを使った3倍オーバートーンで、IFが455KHzのシングルスーパーで構成されている。

送信部は、受信部と同様、局発に2SK19-GRを使った3倍オーバートーンで、電力増幅は2SC372-Yを使用し、出力10mWを得ている。

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2、全回路図

各パーツは、AM自作機に使用されているものなので特に問題はなさそうである。中間波増幅には、三洋電機の「LA1201」を使用しており、音声増幅は、NSCの「LM386N」を使用している。しかし、生産終了により廃止品があるために、パーツの入手や互換品の入手は、アマチュア無線家にとっては腕の見せどころである。

➡ 「LA1201データシート.pdf

➡ 「LM386Nデータシート.pdf

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3、プリント基板

下図は、プリント基板およびパーツの配置図である。基板が出来たらパーツと必要なリード線を半田付けして取り付ける。基板の大きさは、(W80×D95)

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4、ケースに納める

ケースの加工が終わったら、ケースにパーツおよび基板を取り付けて配線を施す。パーツを変更した場合など、調整時に基板を外すことが考えられる場合は、基板は取り付けないで、リード線を長めに配線する。調整が終了したら基板を取り付けて再度配線を施す。

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5、送受信部の調整

■ 受信部の調整

<最初は、アンテナを付けない>

無信号時の電流測定は、POWERスイッチの端子間で測定して、30mA以内であれば良好である。

局発の調整は、受信機を聞きながらL4を回しながら 50.165MHzの発振を確認し、ピークから下がった点に設定する。

<ここから、アンテナを付ける>

受信の調整は、アンテナを繫いでVR1を半分以上回しておき、外部ノイズが最大になるように、L1〜L3、L5、L6を回す。最大になったらVR1を絞り、外部ノイズが出始める点と、Sメーターがゼロになる点を合わせる。なお、Sメーターの最大点は強い局を受信してVR3で調整する。

■ 送信部の調整

<最初は、ダミーロードを付ける>

局発の調整は、受信機等を聞きながらL7を回して、50.620MHzの発振を確認し、ピークから下がった点に設定する。

VR4を最大にして、変調がかかっていることを確認する。また、パワーメーターを見ながら、L8を回してピーク点を探す。

<ダミーロードをアンテナに替える>

受信しながらL7をまわして、変調音を最良点に合わせる。

パワーメーターを見ながら、L8を回して最大に合わせる。

最後にVR4でマイクゲインを調整する。

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6、AM機の外観

ケースの外観および取り付けたパーツの配置と名称を示す。左側は正面で、右側は背面である。アルミケースの大きさは、(W50×D100×H150)

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7、測定結果

測定結果は、パーツの変更や基板の出来上がり具合、また、配線の方法などにより多少の違いが出るため、あくまでも参考値である。

■ 受信部

・ 中心周波数:50.623MHz

・ 全電流:無信号時 22.0mA、最大の音量時 150mA

■ 送信時

・ 送信周波数:50.622MHz

・ 入力:3.3V×10mA=33mW、出力:13mW、能率:39.3%

・ 全電流:変調最大時 23.5mA

8、交信結果

完成した直後に、15局の交信が成立したが、大変良い結果が得られた。当時の運用場所は横浜市青葉区、アパマンハム時代でアンテナは、4階のベランダにヘンテナを上げた簡単なものだった。その時の交信結果を下に示す。なお、最後のOMは現在の運用場所で交信したものである。

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現在の運用場所は川崎市麻生区、アンテナは、地上高26mH、5エレ八木で運用中、50.620MHz AMモードでCQが聞こえたら、「AMって何?」「そんなこと言わずに、よろしく!」

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