CAT通信をするためにCATインターフェースを自作する

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CATインターフェースは、PCとリグをRS-232Cケーブルで接続し、CAT通信を行うことができるインターフェースである。最近のPCのM/BにはRS-232Cの端子は付いているが、寂しいことにリアパネルにはRS-232C接続コネクタが付いていない。しかし、接続コネクタを自作するか増設ボードを取り付ける、またはUSBシリアル変換ケーブルを使用すればCAT通信を行うことができる。

一方、KENWOODのリグはRS-232C(COM)を装備したリグも多くあるが、ここではRS-232Cの装備はなく、代わりにACC1アクセサリー端子を装備しているリグと、PCのRS-232Cを接続してCAT通信ができる「CATインターフェース」を自作する。

ACC1アクセサリー端子を装備しているリグで確認が取れているのはTS-790/850/950である。もしかすると他にも可能性はある。

1、回路図

PC側のRS-232Cの接続コネクタは、D-sub 9pinコネクタを使用する。KENWOODのリグ側のCAT信号は、ACC1アクセサリー端子から取り出す。ここではデータをやり取りするだけのため回路そのものは至って簡単で、TXDとRXDとGNDの3本の信号だけあれば十分CAT通信ができる。

TXD(Transmit Data) 送信データ

RXD(Receive Data) 受信データ

GND(Ground) 信号用接地または共通帰線

DSRとDTRおよびRTSとCTSは、信号処理が許容オーバーするとフロー制御の働きをする。この端子同士が離れていると無信号の状態になるため、理論上はアクティブになるまで待ち続けることが予測される。しかし、この端子同士を結線すると送信許可信号を返すため、フロー制御が無視されて通信が行われることになる。また、RTSは回路の電源として利用する。

RS-232Cの信号はTTLレベルで、マーク(H)が-15V~-3V、スペース(L)が+3V~+15Vで、負論理の制御信号である。また、スレッショルド(閾値)電圧は±3V程度である。

KENWOODのACC1の信号はTTLレベルで、マーク(H)が-5V、スペース(L)は0Vで、負論理制御信号である。RS-232Cの信号レベルを考えると、レベル変換なしで直接接続できそうである。しかし、ここではあえてRS-232Cインターフェース・デバイスICADM3202ANを使用する。このデバイスの作動電圧は+3.3V~+6.6Vである。なお、NOTゲート回路のため、前記のことから再度論理信号を反転させる必要があり、TTL汎用ロジックIC74LS04を使用する。このICはNOT回路を6回路内蔵しているため、3台のリグを接続できるが、以下の回路図は2台分まで記した。

リグの同時運用の可能性は低いが、同時運用は使用ソフトまたはリグの誤作動を誘発するため、1台ごとに火を入れて運用することになる。

これら両方のICは現在でも秋月電子通商などで入手可能である。

➡「ADM3202ANのデータシート.webp

➡「74LS04のデータシート.webp

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2、パーツの極性

以下の画像は、ACC1用6ピンプラグおよびRS-232C D-sub 9コネクタ(メス)基板用の極性およびピン配置を示す。なお、ACC1用6ピンプラグはヤフオクで入手したが、ネットでググると出てくるようである。入手が困難な場合は自作するかリグのカバーを外し直結する。また、RS-232C D-sub 9コネクタ(メス)の基板用が入手できない場合は、(オス)に変更するかパネル用を入手、またはジャンク品から外して使用する。


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3、パーツの取り付け

以下の画像左は基板の裏側で、右は表側である。手抜きをして蛇の目基板にパーツを取り付けた。リグのACC1アクセサリー端子への接続はコネクタを使用すればいいのだが、ちょうどいいコネクタがなかったためケーブルを直付けにした。直付けにした場合ケーブルが動き断線の恐れがあるため、以下の画像で見て取れるように、ケースへ組み込む前に基板へ取り付けると確り固定できる。

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4、ケースに収納

以下の画像は、プラスチックケースを加工して、基板をケースに納めて配線を施したもので、ケースは、ELPABOX02(BK)(W65×D100×H35)のプラスチックケースが手持ちにあり、加工が容易なために使用した。実際にこのような信号を扱うには、アルミケース等の金属筐体を使用するのが妥当だろう(*_*メ)。

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以下の画像は、TS-950Sを2台接続するために、上記基板にACC1アクセサリー端子をもう1個追加し、回路図と同等に作成したものである。後付けしたACC端子の通し穴が若干ズレているのが見て取れるが、作動には問題ないだろう。

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5、完成

以下の画像は完成画像で、左がリグのACC1アクセサリー端子へ接続する面で、右画像がRS-232C D-sub 9コネクタから、PCへ接続する面である。現在は、RS-232C増設ボードを取り付け、RS-232C延長ケーブルを使用してPCに接続している。勿論USBシリアル変換ケーブルを使用することもできる。


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以下の画像は、今回自作した「CATインターフェース」をPCとKENWOODTS-950Sを接続して、LPB2(LP-BridgeSoftware)を媒体として、HDSDRおよびTurboHAMLOG/Winを作動させている画像である。HDSDRのバンドスコープは、SDR 用受信ボックスを自作してリグの IF (中間周波数) を拾って表示している。

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6、最後に

近年リグも多様化してバンドスコープを表示するリグが店頭に並ぶようになってきたが、リグに付いているバンドスコープの表示部は物理的に小さくなってしまい見づらくなってしまう。少し手間をかければこのような大画面のバンドスコープが実現できる。

※ 参考
現在TS-950Sを2台接続して運用しているが、SDRを楽しむにはIF信号もリグごとに必要になってくる。そこで、以下の簡易型接続器を自作して使用している。この回路にリグを同時接続すると、リグおよびSDRソフトに誤作動を誘発するため、使用するリグだけ火を入れて運用している。事実上同じリグ2台に火を入れて運用することはないと思うが、気になる場合はバッファを設ける。またはスイッチを付けて切り替えるなどの回路を考える必要がある。

以下の回路と同じものを作成する場合は、カップリングコンデンサは必ず付加した方が安心だろう。IF信号を扱う筐体は金属で作製するのが一般的である。しかし、この自作も手抜きしてプラスチックケースに納めたが、ノイズなどの混入もなく順調に作動している。

以下の回路接続方法は、IF入力側にはリグのIF出力を接続、IF出力側にはドングル(TVチューナー)を接続する。

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