SDRを受信するための簡易型切替受信ボックスの自作を紹介
SDR(Software Defined RADIO)を日本では、ソフトウェアラジオまたはソフトウェア無線などと呼ばれている。本来は半導体が行うべき処理の大部分を、このSDRは、異なる変調方式や周波数帯、また出力を簡単なハードウエアを用いて通信する。このウェブサイトで「HDSDR」および「SDRSharp」を紹介しているが、チューナーにはドングル(Dongle)と呼ばれるUSB TVワンセグチューナーを使用する。このドングルを単体で使用すると、おおむね24MHzから1700MHzの広帯域受信が可能になる。また、周波数をコンバートすることでHF帯全域やLF・MFの受信も可能である。なお、アンテナもソフトで何とかならないものかと思うところであるが、現状では、受信周波数帯に必要なアンテナの接続は必須である。
このソフトを用いて、HFからUHF辺りまで広範囲を完璧に受信しようとすると、広帯域受信用アンテナでも、1本では用を成さない。そこで、ソフトウェアラジオの受信に必要な2種類のアンテナを、パソコンの近くで簡単に切り替えられるスイッチと、HF以下の周波数も受信できるように、HFコンバーターを内蔵した簡易型の「SDR用受信ボックス」を作製する。このボックスは、以前紹介した「SDR用アンテナの簡易切り替え器」に、HFコンバーターおよびドングル、LEDを内蔵し、受信アンテナを2本に変更したものである。
⑴ USBドングルチューナー
チューナーチップに(Elonics E4000)、(Rafael Micro R820T,R828D)、(Fitipower FC0012,FC0013)、(FCI FC2580 )のICが搭載されており、デコーダーチップに(RTL2832U)のICが搭載されているものを使用する。入手するには、[RTL2832U+R820T2]で検索する。(ドングルの詳細は、ここを参照)
⑵ HFコンバーター
HF帯以下を受信するには、周波数コンバーターが必要になる。そこで、このウェブサイトで「(HFコンバーター)SC-HFCONV-100」の完成品を紹介しているが、同コンバーターのキットを配布している。キットのパーツはチップ部品を使用しており、ハンダ付けに苦労するが、このキットを組み立てて使用することにする。なお、チップ部品のハンダ付けなどは、このサイトの「HFコンバーターキットの組立」で紹介している。
「SC-HFCONV-100」キットの入手先は、ここからメールで申し込む。また、今回は使用しないが、基板に取り付けるコンバーター切り替え用リレーを別途料金で送っていただける。
⑶ ケース(受信ボックス)
ドングルやコンバーターは、水晶で安定した周波数を発振させるオシレータ―を内蔵しており、通常は外部の影響を受けにくい金属筐体を使用するが、今回は加工の簡単なプラスチックケースを使用する。
⑷ その他
・2極双投型トグルスイッチ ×1個 (ロータリースイッチでも可)
・F型ナット止め式レセプタクル ×2個 (BNC型でも可)
・小型DCジャック 2.1mm ×1個 (5V1A程度に耐えれば何でも可)
・LED ×2個 (付加しなければ不要)
・LED用抵抗 1kΩ ×2個 (LEDを付加しなければ不要)
・同軸とリード線(細いものを少々)
2本のアンテナから、受信したい周波数帯のアンテナをスイッチで切り替え、VHF帯以上を受信する場合は、コンバーターの電源をOFFにして、同時に受信信号をUSBドングルへ送り、その復号化信号をPCで待ち受けるSDRに任せて再現する。
また、HF帯以下を受信する場合は、コンバーターの電源をONにして、同時に受信信号をコンバーターに導き、その受信信号をUSBドングルへ送り、復号化信号をPCで待ち受けるSDRに任せて再現する。なお、LEDは電源投入およびコンバーター電源ON&OFFの確認用である。
以下の図は実態配線図であり、赤色および黒色の線はDC+5Vの電源用配線で、青色の二重線は同軸用配線である。また、コンバーターの電源投入の位置は、ハンダ付けが容易にできるリレー用(JP1)のランドを利用する。
HFコンバーターを組み立てたら、ケースに組み込む前に仮配線を施し、チェックして作動することを確認しておく。以下の画像はドングルをセットし、7MHz帯のアマチュア無線を聞きながらチェックしている様子で、ウォーターフォールを見ても完璧に作動していることが見て取れる。
⑴ ケースを加工し、各パーツの取り付けが終わったら配線を施す。以下の画像は、ケースに組み込み配線を施した画像である。
USBドングルは、強いノイズなどを受けると破損しやすいため、簡単に交換できるよう加工しないで取り付ける。なお、ケース内部配線を長めに施し、基板を持ち上げられるように余裕を持たせている。
また、ここで注意したいのは、ドングルのUSB端子をガタがないように穴あけ加工し、およびケース内で上下前後左右に動かないように固定する。私の場合は、以下の内部写真で見て取れるように、上下前後の動きはステーで固定して、左右の動きはコンバーターの基板のスペーサーの高さをドングルに当たるように調整し、ドングルに基板をピタリとくっ付けて固定している。
図面には描いてないが、電源の安定およびノイズなどの軽減のために、DCジャックの電源部に47μFの電解コンデンサーおよび、0.01μFセラコンをパラに取り付けている。
⑵ 以下の画像は、SDR受信ボックスの完成画像で、左は正面、右は後面である。
使用したケースは、ELPA(エルパ・朝日電器)のHK-BX02(BK)(W100×D65×H35)を使用した。また、DIYセンターなどで安価で入手できる。
⑴ 以下の画像は、完成したSDR受信ボックスをパソコンにセットし、コンバータをONにして、アマチュア無線7MHz帯のLSBをワッチしている画像である。
アンテナは、ナガラのTA-351-40で、地上高は25メートル、再生ソフトはHDSDRである。
ドングルの接続はUSB延長ケーブルを使用し、DC電源はUSB DCプラグ変換ケーブルを使用する。なお、手元にケーブルがない場合は、安価で販売しているが、転がっているケーブルで容易に自作できる。
⑵ 以下の画像は、HFコンバーターをOFFにして、FMヨコハマ(84.7MHz)をワッチしている画像である。
アンテナは、コメットCA52HB4(50MHz帯用)で、地上高は26メートルである。
⑶ 以下の画像は、内部ノイズが発生しているか見比べている画像である。
左は、アマチュア無線50MHz帯のUSBを受信している画像で、右は左と同じ受信状態を保ったまま、アンテナを外して受信している画像である。この方法でチェックした限りでは画像に気になるノイズなどは見て取れない。また、音声にもノイズらしいものは聞こえてこない。なお、受信ボックスを手でつかんだり、移動できる範囲で動かしたりしてみたが全く変化を示さなかった。安価なプラスチックケースに納めても十分満足できる結果が得られた。
今回作製した「SDR用受信ボックス」は簡易的なものだが、しっかりしたアンテナを使用すれば、このようなものでも満足できる。
しかし、主にUHFやSHFなどの受信を必要とする場合は、インピーダンス整合を念頭に置き、同軸リレーなどを用いた回路構成が必要になる。