SDR用 HFコンバーターキットの組立

SDR(Software Defined RADIO)ソフトウェアラジオで受信する場合は、チューナーにドングル(Dongle)と呼ばれるUSB TVワンセグチューナーを使用する。このドングルを単体で使用すると、おおむね24MHzから1700MHzの広帯域受信が可能になる。また、周波数をコンバートすることでHF帯全域やLF・MFの受信も可能である。
そこで、今回はSDRソフトを用いて、MF帯からHF帯まで受信を可能にしたHFコンバーターキット「RTL-SDR対応HF UP CONVERTER SC-HFCONV-100」を組み立てることにする。キットに使用するパーツそのものはわずかだが、鉛筆の芯よりも小さいと思える程のチップ型なので、初めて組み立てる方の苦労話を良く耳にする。そこで、私の使った道具やハンダ付け方法などを紹介させていただき、今後組み立てる方の参考になれば幸いである。なお、組み立ての方法やパーツ配置などは、「組立説明書」に細かく書かれているのでここでは省略する。
「SC-HFCONV-100」キットの入手先は、「HFコンバーターキット」からメールで申し込む。また、必要があれば、基板に取り付けるコンバーター切り替え用リレーを別途料金で送っていただける。なお、「組立説明書」および「回路図」も同ウェブサイトからダウンロードできる。
上記の入手先ウェブサイトにも掲載されているが、以下の画像がお送りいただいた「HFコンバーターキット v1.8」のパーツの内容である。

習熟者が行うチップ部品のハンダ付けの様子は、ウェブ上で誇らしげに紹介されているが、初心者はチップ部品を見ただけでうろたえてしまう。そこで、私がチップ部品をハンダ付けする時に使用する道具を紹介し、その使い方を簡単に説明するが、参考になれば幸いである。なお、画像上に盃が見てとれるが、「酒を飲みながら組み立てればうまくいく?」ということではないので、誤解されないようにお願いしたい。

番号 | 道具 | 使い方 |
① | ハンダごて | 30WをACパワーコントローラで温度調節しながら使用する。コントローラを使用しない場合は、20W程度が良い。 |
② | こて先 | 先端の細いものがない場合は、同軸10D2Vの心線を加工して利用する(下記参照)。 |
③ | ハンダ | 太さは0.3mmから0.6mm程度が使いやすい。 |
④ | フラックスおよびフラックス入れ | フラックスが固い場合は、有機化合物が含まれる除光液などで、微量で薄めて使用する。 |
⑤ | フラックス筆 | メイク用の細い筆は使い勝手が良い。 |
⑥ | ピンセット | 先端の細いものを使用する。チップケースからチップ部品を取り出して基板上に載せるときだけ使用し、基板上では千枚通し等に任せる。ピンセットでチップ部品を何回も掴んでいると小さすぎるため飛ばしてしまう。 |
⑦ | 千枚通し | 基板上でチップ部品の移動や、ランド上にセットするときなどに使用する。 |
⑧ | カッターナイフ | チップケースの蓋を開けるときに使用する。 |
⑨ | ラジオペンチ | チップ部品の押さえに使用するが、重さは100gから150g程度、取手付きで左右に動かないもの、押さえたときにチップ部品が見えやすいものであれば何でも良い。 |
⑩ | 爪楊枝 | チップ部品の押さえに使用する。 |
その他 | ケース | チップ部品が落ちても探せるように、白色の紙箱等で回転できるもの、さらに淵にペンチの取手が乗せられるものであれば最高。 |
拡大鏡 | なくても良いが、これがあれば鬼に金棒である。 |
上記②のこて先を、10D2Vの同軸ケーブルの心線でペン型に加工した画像である。ハンダ付けに慣れてくると、先の平らなD型などに加工した方が使いやすいが、初心者はペン型が使いやすい。購入しても良いが「自作のプライドはどうする?・・・。」「プライドなんかないよ!」「そうか・・・」

ハンダ付けする際に、基板が小さくて動いてしまうので、ハンダ付けしない部分をセロハンテープ等で固定する。

ここでラジオペンチと爪楊枝が活躍する。チップ部品が動かないように重りの代わりに使用するが、以下の画像のように爪楊枝をラジオペンチで挟んでテープ等で固定する。また、ラジオペンチは左側の画像で見て取れるように、基板に対して水平に置かないと動き易くなる。固定の角度は右画像のように、直角に挟むよりも少し斜めに挟んだ方が、ハンダ付けする部分が良く見えるので、ランドにこて先を付け易くなる。
なお、画像のようにケースを利用してハンダ付けするが、ケースを使用する理由は、チップ部品を落とした時に探しやすいこと。もう一点は、こて先をランドに当てやすいようにケース毎回転できることである。基板が回せないと無理な体制でこて先を持っていくので、チップ部品が動いてしまったり、ハンダがうまく載らなかったりして接触不良になる恐れがある。

以下の画像は、私の使用している蛍光灯付きの拡大鏡である。拡大鏡の入手前は、チップ部品のハンダ付けは避けるようにしていたが、この拡大鏡を入手してからは、チップ部品のハンダ付けが普通のパーツのハンダ付けと変わらなくなった。勿論目の良い方は拡大鏡がなくても問題ないだろう。

下図は、組立説明書に載っているパーツ配置図および完成画像である。見やすく拡大したので参考になれば幸いである。なお、バージョンは1.7だが1.8とコンパチである。また、組み立て方法などは、「組立説明書」に分かりやすく記載されているので説明書を見ながら組み立てる。
<パーツ配置拡大図>

<完成画像>
ダウンロードした「組立説明書」のバージョンは1.7で、推薦組立順序のリレー(オプション)に「SJ2, SJ3のランドからハンダを除去する」ように記載されているが、バージョン1.8ではハンダは除去されているので、リレーを付加しない場合は、SJ2, SJ3のランドをハンダでつなぐこと。

以下の画像は、「SC-HFCONV-100」の組み立てが完了して基板に仮配線を施し、SDR対応のUSBドングルをパソコンにセットした状態で、受信の確認をしているところである。
ソフトは、HDSDRを使用したがノイズもなく綺麗に作動していることが見て取れる。

実は事前に「SC-HFCONV-100」の完成品を入手し、専用のアルミケースに入れて使用している。今回組み立てたキットは、プラスチックケースで簡易型の切り替えボックスを作製して納めているが、SDRソフトを立ち上げ、受信状態を比較しても完成品と変わらない。また、プラスチックケースに納めても、内部ノイズなどが発生する様子もなく、高性能なコンバーターである。
このコンバーターを入手してからは、仕事用のパソコンに SDRのソフトをインストールし、仕事をしながらHF帯のアマチュア無線をラジオ代わりに聞いているが、実に快適である。興味のある方には超おすすめのコンバーターであると思う。