SDRをHFからUHFまで受信するアンテナ切り替え器の自作
SDR(Software Defined RADIO)を日本では、ソフトウエアラジオまたはソフトウエア無線などと呼ばれている。本来は半導体が行うべき処理の大部分を、このSDRは、異なる変調方式や周波数帯、また出力を簡単なハードウエアを用いて通信することができる。このウェブサイトで「HDSDR」と「SDRSharp」を紹介しているが、チューナーにはドングル(Dongle)と呼ばれるUSB TVワンセグチューナーを使用する。このドングルを単体で使用すると、おおむね24MHzから1700MHzの広帯域受信が可能になる。また、周波数をコンバートすることでHF帯全域やLF・MFの受信も可能である。なお、アンテナもソフトで何とかならないものかと思うところであるが、現状では、周波数範囲に必要なアンテナの接続は必須である。
このソフトを用いて、HFからUHF辺りまで広範囲を完璧に受信しようとすると、広帯域受信用アンテナでも、1本では用を成さない。そこで、ソフトウエアラジオの受信に必要な3種類のアンテナを、パソコンの近くで簡単に切り替えられる、簡易型のアンテナ切り替え器を自作する。
3本のアンテナから、受信したい周波数帯のアンテナをスイッチで切り替え、その受信信号をUSBドングルへ送り、その復号化信号をPCで待ち受けるSDRに任せて再現する。また、短波帯を受信するためにHFコンバーターを付加した場合、コンバートするときだけコンバーターの電源をONにするスイッチを付ける。言うまでもないが、コンバーターを付加しない場合は、このスイッチは必要ない。なお、電源配線以外は同軸ケーブル(青色の部分)を使用する。
使用したコンバーターは、㈲シャフトコーポレーションが販売する「RTL-SDR対応HF UP CONVERTER (HFコンバーター)SC-HFCONV-100」である。コンバーターの電源は、DC+5VのUSB電源が使用できるように、USB miniBコネクター/レセプタクルが付いており、消費電流は30mAである。以下の電源回路は、SC-HFCONV-100コンバーターをON・OFFにするためのスイッチを付けた場合、スイッチとコンバーターの間に必要になる。なお、ノイズや回り込みなどを気にしない場合は、省いても大きな問題はない。
手持ちのプラスチックケースに納めたが、できれば高周波を扱うため金属(アルミ等)ケースがベストである。以下の画像がケースを加工し、パーツを取り付けて配線を終えた簡易型の切り替え器である。それでは、内容を説明する。
① USB電源部(基板に乗せたが、直付けでも良い)
② 受信信号の2次(出力)側のカップリングコンデンサー(0.01μF)
③ 2回路3接点のロータリースイッチ(トグルスイッチでも可)
④ 金属ケースに収納すれば必要ないが、アースを取るための銅板
入出力のコネクターに、F型コネクター/レセプタクルを使用したが、他のコネクターを使用しても良い。また、ケースを移動した時などに、配線したケーブルが動かないように固定できるのであれば、直付けの方が信号のロスは少なくなる。またUSB電源は、後部にコネクターを取り付けるスペースがなかったため、1次側および2次側ともスイッチに直付けにして、ケーブルが動かないように絶縁性の良いシリコーン系のバスボンドでケースに固定した。
以下の画像がSDR用アンテナ簡易切換器の全体像である。コンバーターは切り替え器の近くに置くため、2次側の電源ケーブルは0.5メートルにした。また、1次側USB電源はパソコンのUSBソケットから取ることにして、2メートルにした。パソコンは数多くの放射ノイズが出ているため、ドングルや切り替え器は、パソコンからなるべく離した方がノイズの悩みを解消してくれる。なお、内部ノイズは、上記2、電源回路で、ある程度除去してくれる。内部ノイズがあまりにも気になるようであれば、正規フイルターを付加するか、このウェブサイトで紹介した、「USB電源アダプターの自作」等を使用する。
以下の画像は、今回自作したアンテナ簡易切り替え器を使用して、「SDRSharp Ver:1.0.0.1427」を立ち上げ、東京FM放送を受信した画像である。使用したアンテナは、アマチュア無線用の50MHz帯用「コメットCAHB4」、地上高26mHのバックで受信したものである。スペクトラム表示は、Rangeを下まで下げてあるにもかかわらず、信号が強いために伸び切っている。ウォーターフォール表示は綺麗に調節できた。同調を取った状態では、ノイズなどは感じられなかった。
以下の画像は、今回自作したアンテナ簡易切り替え器を使用し、前記2、で紹介したHFコンバーター「SC-HFCONV-100」を付加して、「SDRSharp Ver:1.0.0.1427」を立ち上げ、アマチュア無線の3.5MHzを受信した画像である。使用したアンテナは、アマチュア無線用の3.5MHz帯用「クリエートCD78」、地上高22.5mHで受信したものである。スペクトラム表示は、Rangeを調節して全体が見えるようにした。ウォーターフォール表示には、多少のノイズと思われる流れが見られるが、同調を取った範囲内では、気になるノイズは感じなかった。その他、回り込みなどのノイズは感じなかった。
今回自作した「SDR用アンテナ簡易切り替え器」は簡単なものだが、しっかりしたアンテナを使用すれば、このようなものでも十分実用になる。しかし、主にUHFやSHF等の受信を必要とする場合は、インピーダンス整合を念頭に置き、同軸リレー等を用いた回路構成が必要になってくる。