Zadigを使用した受信用DVB-T USBドングルのインストール方法
RTL(Registor Transfer Level)レジスタ・トランスファ・レベルは、ステートを保持するレジスタと、レジスタ間の遷移を定義する組み合わせ論理で実現され、このレベルでハードウエア回路を記述したものをRTLと呼んでいる。SDR(Software Defined Radio)は、ご承知のようにソフトウエア無線である。RTL-SDRは安価なソフトウエア無線として使われているRTL2832Uチップセットを内蔵し、DVB-T USBドングルを利用するためのツールセットである。このチップはチューナーからホストデバイスに生のI/Qサンプルを直接伝送することができる。
Zadig は、「Mr.Pete Batard」が作成した、Windowsに含まれているUSBデバイス用の汎用ドライバー、またはベンダークラスのUSBデバイスインターフェース用の完全なドライバー、およびライブラリソリューションなど、汎用USBドライバをインストールするDVB-T USBデバイスのアクセス支援ツールである。
DVB-T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)デジタル・ビデオ・ブロードキャスティング-テレストゥリアルは、国際的に承認された地上デジタルテレビ放送のための公開標準規格であり、さまざまなハードウエアを使って受信することができる。
このページでは、Zadigの支援をお借りして、RTL-SDRを構築するために必要な、RTL2832Uチップセットを搭載した、DVB-T USBドングルのインストール方法を、画像を用いながら記すことにする。
DVB-T USBドングルは、チューナーチップに、E4000/R820T/R828D/FC0013/FC0012/FC2580等が搭載されており、デコーダーチップにRTL2832Uが搭載されているものを使用する。
⑴ チューナーチップおよびその週数範囲を以下に記す。
チューナー | 周 波 数 範 囲 |
---|---|
Elonics E4000 | 52MHz ~ 2200MHz |
Rafael Micro R820T | 24MHz ~ 1766MHz |
Rafael Micro R828D | 24MHz ~ 1766MHz |
Fitipower FC0013 | 22MHz ~ 1100MHz |
Fitipower FC0012 | 22MHz ~ 948.6MHz |
FCI FC2580 | 146MHz ~ 308MHz & 438MHz ~ 924MHz |
・ ドングルの詳細は、➡ rtl-sdr Supported Hardware
⑵ リアルテック社(Realtek)のデコーダーチップRTL2832Uの概要を抜粋。
RTL2832Uは、USB 2.0インターフェースをサポートする高性能DVB-T COFDM復調器で、NorDig Unified1.0.3、D-Book 5.0、EN300 744と互換性があり、6、7、8MHz帯域幅で2K、8Kモードをサポートする。
また、IF(中間周波数、36.125MHz)、低IF(4.57MHz)、または28.8MHzクリスタルを使用したゼロIF出力のチューナーをサポートし、FM/DAB/DAB+無線サポートを含む。RTL2832U は、高度なADC(A/D コンバーター)を組み込んでおり、ポータブル受信で高い安定性を備えている。
⑶ デコーダーチップが「RTL2838UHIDIR」と表示される製品が多くみられるが、RTL2832UのOEM製品のため、コンパチブルで問題なく使用できる。
⑷ 近年SDR用のレシーバーモジュール、RTL-SDR Blog V3のようなRTL-SDRドングル等が多く発売されるようになった。これらドングルの受信周波数範囲は、おおむね500kHzから1,700MHzと広範囲に及ぶため、サンプリング・レートの変更は必要だが、別途コンバーターを使用することなくHF帯以下の周波数も受信できる。
※ 参考 入門用としてはこのような安価なものでも十分作動する。
【 2024/07/10現在 】
株式会社ゾックス USB ワンセグチューナー DS-DT308SV
チューナーチップ [FC0013]、デコーダーチップ [RTL2832U]
周波数範囲 22-1100MHz(¥1,147 配送料無料)
■ amazon で確認する場合 ➡ DS-DT308SV
※ 参考 多くのSDRソフトウエアパッケージと互換性のある低コストドングル。
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R820T2 & SDR 広帯域受信機
チューナーチップ [R820T]、デコーダーチップ [RTL2832U]
周波数範囲 25-1750MHz (¥5,895 配送料無料)
■ amazon で確認する場合 ➡ RTL2832UおよびR820T
※ 参考 SDR用のレシーバーモジュール、RTL-SDRドングル(品薄で高価になった。中国には安価で有るが?)。
【 2024/07/10現在 】
R820T2 & SDR 広帯域受信機
チューナーチップ [R820T2]、デコーダーチップ [RTL2832U]
周波数範囲 500KHz-1.7GHz (¥14,250 配送料無料)
■ amazon で確認する場合 ➡ RTL-SDR Blog V3
⑸ DVB-T USBドングルをアンテナに接続するケーブルは、50Ωまたは75Ωの同軸ケーブルを使用する。DVB-T USBドングル側のコネクタは通常MCXで接続し、アンテナ側は各々で接続しやすいコネクタを使用する。
⑹ 以下にそれぞれの変換ケーブルおよび変換コネクタの例を示す。
❶ MCXオス ⇔ SMAメス変換ケーブル(テレビの同軸を使用する場合はSMA ⇔ F型変換アダプターを使用する)。
❷ MCXオス ⇔ F型メス変換ケーブル(アンテナ側がF型のためテレビの同軸が使用できる)。
❸ SMAメス ⇔ F型オス変換コネクタ(他にも多くの変換アダプターは存在する)。
⑺ 下図は、アンテナに同軸ケーブルを接続、その同軸ケーブルをDVB-T USBドングルの入力側に接続する。そのDVB-T USBドングルの出力側をPCのUSBソケットに接続、PC上で作動するSDR ソフトは、DVB-T USBドングルのドライバーをキャッチし、受信信号をモニターやスピーカーへ出力するセットアップイメージの例である。
Zadig については冒頭に記したが、DVB-T USBデバイスをアクセスするため、「Mr.Pete Batard」が作成した支援ツールである。
⑴ DVB-T USBドングルは地上デジタルテレビ用に作成されたデバイスであり、PCのUSBソケットに差し込むだけでは、SDRソフトウエアは作動しない。そこで、DVB-T USBドングルをSDRソフトウエア用のデバイスドライバーとして使用するためにZadigの支援が必要になる。
⑵ 以下の画像「Mr.Pete Batard」のウエブサイトから、[Zadig.exe]を任意の場所へダウンロードする。なお、Zadigは実行ファイルのためインストールする必要はない。
・ Zadigのダウンロード ➡ https://zadig.akeo.ie/
DVB-T USBドングル(以下「USBドングル」と記す。)のインストール、およびダウンロードした「Zadig」を使用し、RTL-SDR(以下「SDR」と記す。)用ドライバーのインストール手順を以下に記す。
▶ 手順 1
用意したUSBドングルをPCのUSBソケットに接続する。接続すると、OS用ドライバーが自動的にインストールされる場合があるが、そのままインストールする。しかし、ここでインストールされたドライバーはSDRには使用できないため、以下でダウンロードしたZadigを使用してSDR用ドライバーに変更する必要がある。
デバイスマネージャーを確認すると、以下画像のように接続したUSBドングルが「他のデバイス」として、ビックリマーク付きで表示されているのが見て取れる。このデバイスの表示名は、USBドングルによって違ってくるが、後で必要になるため記憶しておくかメモに残しておく必要がある。
⑴ OS用ドライバーが自動的にインストールされた場合は、「他のデバイス」以外のツリー内に表示されている場合が多いため、良くリサーチする必要がある。
⑵ このページでのデバイス名は「RTL2832UのOEM製品」のため[RTL2838UHIDIR]となっているが問題なく作動する。
⑶ TV28Tv2DVB-T/EzTV666/EzTV-668等のドングルは、Bulk-In,Interface(Interface 0)などと表示される場合があるため要確認する。
⑷ 同名称のドングルでもロットによって、デバイス名の表記が変わる場合があるため、不安な場合は良くリサーチする必要がある。
▶ 手順 2
SDR用ドライバーをインストールするため、ダウンロードしたUSBデバイスのアクセス支援インストーラー[zadig.exe] をダブルクリックして実行する。
▶ 手順 3
ユーザーアカウント制御のダイアログが表示された場合は[はい]をクリックする。
▶ 手順 4
インストーラーが立ち上がると、ドライバーインストール用のダイアログが表示されるため、以下の操作をする。
❶ 上部メニューバーの[Options] をクリックする。
❷ 表示されたメニュー内の[List All Devices]をクリックする。
▶ 手順 5
「List All Devices」をクリックすると、横長のプルダウンメニュー内に、PC内すべてのデバイスが表示されるため、手順1で記憶したUSB ドングル用のデバイス名を選択する。
⑴ 以下の画像は前記で接続したUSBドングルで、デバイスマネージャーに[RTL2838UHIDIR]と表示されたデバイスを選択したものである。
⑵ 間違って他のデバイスを選択してしまうと「選択したデバイスまたはPCが作動不能」になる恐れがあるため「細心の注意を払い選択」する必要がある。
▶ 手順 6
選択したUSBドングルに、SDR用ドライバーをインストールする。
❶ 選択したデバイス名が表示されていることを再確認する。
❷ [Install Driver]をクリックする。再インストールは[ReInstall Driver]表示に代わる。
▶ 手順 7
以下の画像はSDRドライバーのインストール中で、若干の時間を必要とする。
▶ 手順 8
インストールが完了するとダイアログが開くため[Close]をクリックしてインストーラーを終了する。
▶ 手順 9
[デバイスマネージャー]を立ち上げ、USBドングルのデバイスにSDRドライバーが組み込まれていることを確認する。
⑴ 以下の画像では「ユニバーサル シリアル バス デバイス」内にRTL2838UHIDIRの名称でビックリマークがなくなり、正常にインストールされているのが見て取れる。
⑵ すべてが以下画像の場所にインストールされるわけではない。USBドングルによっては違う場所、また違う名称でインストールされる場合があるため、ない場合は他のデバイス内をサーチする必要がある。
SDRを構築するために必要な、RTL2832Uチップセットを搭載したDVB-T USBドングルのインストール方法を記してきた。このページの閲覧者のほとんどの方は、PCに搭載するSDRソフトウエアは決定していると推測される。
SDRソフトウエアの多くは無償で提供され、それぞれに特徴があり選択肢も多いが、受信のみに特化して初心者にお勧めするSDRソフトウエアは、音質がきれいな「SDRSharp」である。また、無線機とコラボしながら送受信を楽しむのであれば、「HDSDR」が遊びの相手をしてくれる。
※ SDR関連の記事は ➡ SDR ソフトウエア無線 記事の収集
最後にRTL2832Uに少し触れておくことにする。
RTL2832Uには多くのソフトウエアが用意されているが、ユーザーレベルのパッケージのほとんどは、RTL-SDRコードベースの一部として提供されるlibrtlsdrライブラリに依存している。このコードベースには、ライブラリ自体とrtl_test/rtl_sdr/rtl_tcp/rtl_fmなどの多数のコマンドラインツールの両方が含まれている。これらのコマンドラインツールは、ライブラリを使用してRTL2832Uデバイスの存在をテストして、デバイスとの間で基本的なデータ転送機能が実行できる。
ほとんどの RTL2832UデバイスはUSBを使用して接続されるため、librtlsdrライブラリはlibusbライブラリに依存して、デバイスと通信する。
libusbは、USB デバイスへの汎用アクセスを提供するCライブラリで、USBハードウエアと通信するアプリケーションの作成を容易にするために使用するものである。