マイクロフォン付きで予備のインターホンを自作する
近年住宅用の通信設備も多種多様化し、当然ながらこれらの機器名も多くなり変化しつつある。中でもドアホンとインターホンが混同して、それぞれの違いをよく聞かれることが多い。しかし両者に大差はなく、機器メーカーでさえも機器名が異なっているようである。
そこで、インターホンとドアホンの違いを、簡単に記しておくことにするが、あくまでも参考程度にしてほしい。
⑴ インターホンとは、建物などに設置して構内回線のみで、通信設備を使用した通話のみを可能にしたものである。
⑵ ドアホンとは、子機を住宅の玄関の脇やドアに設置して、室内の親機と玄関を開けることなく来客者と通話ができ、テレビドアホンやワイヤレスドアホン、インターネットを利用する機器など、防犯の目的で設置されるものである。
さて、自宅にインターホンは設置してあるが、門に子機が1機と1階の室内に親機が1機しかないため、2階の部屋でドアを閉めていると、来客者があるときに親機のチャイム音が全く聞こえない。そこで、2階の部屋にいても来客者が分かり、通話ができるインターホンを自作しようと考え、マイクロフォン付きのインターホンを自作することにした。
音声増幅には、オーディオ用アンプの「LM386」を使用する。「LM386」は、条件がそろえば電圧利得が最大で200倍になる。
LM386 ➡ [ LM386データシート.pdf ]
⑴ 下記に作動電圧DC+8V、音声周波数300Hz、入力電圧10mVで「LM386」の出力波形をシミュレーションしてみる。黄色が入力電圧10mV、出力電圧は緑色で約1.8Vになり、180倍(45dB)となることが確認できる。
⑵ 実験の結果、1段増幅では外の音声が小さい場合は増幅しきれないので2段増幅にする。外と室内の音声入力はボリュームでゲイン調整して「LM386」に送り込み、1段目で増幅後ゲイン調節して2段目に送る。また外と室内の音声切り替えは、通信機用マイクロフォンのPTT(プッシュトゥトーク)スイッチを使用してリレーに任せる。電源電圧は、三端子レギュレターを使用してDC+8Vの安定化電源を作り出す。
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⑶ 作成した回路をシミュレーションしてみる。作動電圧はDC+8V、音声周波数は300Hz、入力電圧は10mV、ボリュームは十分に余裕を持たせて、VR1は7.5kΩ、VR2は60kΩと仮定すると、緑色の出力電圧は約2.4Vで240倍(48dB)になることが確認できる。
左は配線図、右は片側プリント基板用配線図(銅箔面側)である。
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左はエッチングしたプリント基板、右はプリント基板にパーツを取り付けた画像である。
右のパーツを取り付けた基板上に、VRが2個確認できるが、白色のVRは1段目のOPアンプ出力調整用である。青色のVRは、1.回路図の「MIC OUTSIDE」で、コンデンサーマイクの電圧調整用抵抗の代用で付けたもので、実際は4.7KΩの抵抗を取り付ける。
配線までの手順は、パーツを取り付けたプリント基板に必要な配線を施し、加工を終えたケースに必要なパーツを取り付け、プリント基板を取り付けて配線を施す。
ケースは手持ちのアルミケース(W130×D150×H60)を使用したが、パーツが入る金属ケースであれば好みで良い。
左は右側の画像、右は左側の画像。
ケースの前後面は化粧板を作製して取り付けたが無くても良い。
⑴ 下左は前面の画像で、左からマイクロフォン入力用レセプタクル、外用マイクゲイン調整用ボリューム、室内用マイクゲイン調整用ボリューム、PowerスイッチとLEDである。
⑵ 下右は後面の画像で、左からDC入力用コネクター、室内用スピーカー出力端子、下側が外部用スピーカー出力端子、上側が外側用マイクロフォン入力端子である。
左は前面画像、右は後面画像。
下画像のケースの上にある室内用マイクロフォンは、アマチュア無線で使用していたPTTスイッチ付きコンデンサーマイクロフォンである。
また、DC電源は出力電圧が9Vから12Vで、出力電流は1Aもあれば十分である。
現在使用している電源は、9V1AのDCアダプターを使用している。ただし、DCアダプターはハム音が出やすいので注意が必要である。
左は前面画像、右は後面画像。
外に使用するマイクロフォンは、コンデンサーマイクを使用する。
⑴ 下左の図は、入力電圧のバラツキを少なくするために、10Ω程度の抵抗をシリーズ接続し、感度を上げるために2.3個をパラレル接続にする。
また、赤色部分は基板上に付いている部分なので、ここでは取り付けない。
⑵ 下右画像は、コンデンサーマイク3個を取り付けたもので、最初は1個から2個、3個と増やしてみて、どの程度感度が上がるかをテストしてみると相当増幅するのが分かる。コンデンサーマイクにもよるが、テストした結果は3個程度が限度で、4個以上増やしてもあまり変化はなかった。
感度のテストは測定器を使用してもいいが、この程度のものであればノイズとひずみなどを考慮しながら耳感で十分である。
スピーカーは、使用しなくなって転がっていたPCのスピーカー(8Ω)を利用したが、音声がはっきり聞こえれば何でもいい。
⑴ 下左画像は、自作した8Ωのスピーカーを2階の部屋に設置した画像である。
⑵ 下右画像は、門に近い自宅の2階ベランダ下側に、防犯カメラとセットで取り付けた画像である。
PCのスピーカーケースの構造上、コンデンサーマイクをケースの下側に取り付けたため、雨に濡れないようにケースを逆さに取り付けた。
このように自作したインターホンと防犯カメラをセットで取り付けてから10年が経過したが、現在も問題なく使用している。
このセットでは、防犯カメラのブザーで来客者を完璧に把握できるが、防犯カメラのスイッチをOFFにしているときは、人の足音で把握している。ただし、足音だけでは来客者なのか通りすがりの人なのかの判別が付かないため、足音が止まったら窓から確認している。自宅は閑静な場所にあるため足音が止まるところまではっきり聞こえるが、道路際など騒音の大きい場所では車の走行音などの方が大きくて、人の足音を聞くどころではないと思う。このような場所では、このインターホンの設置は難しいのではないだろうか。なにせ音の増幅が良く、飛行機が飛んでくると慌ててスイッチを切ってしまう程である。
最後に、ここで作製したインターホンだけでは来客者の判別が難しいので、防犯カメラやPCのライブカメラなどと併用する、または人感センサーなどを取り付ける。少し面倒だが既存のインターホンのブザーと連動させ、2階にブザーを取り付けるなどの工夫が必要ではないだろうか。