アマチュア無線局変更申請ための無線設備の見直しと整理
アマチュア無線局数は、1995(平成7)年3月末に過去最高の136万4,316局を記録したピークを皮切りに、2024(令和6)年5月末では35万6,300局(総務省公表)と約1/4に落ち込んでいる。ピーク時は430MHz帯でも空きがないほど込み合っていたが、近年のバンド内はガラガラでCQすら聞こえてこない。強いて言えば、HFの7MHz帯だけが賑わっている程度である。
このようなことから無線通信のアクティビティーは必然的に下がってしまう。当時は1カ月120枚を目標にQSLカードを発行していたこともあったが、現在は年間数枚程度になってしまった。
電波法の技術基準に定めるスプリアス規格が改正・施行され、2007(平成19)年11月30日以前に製造された旧スプリアス規格の無線機は、2022(令和4)年12月以降は使用できなくなる。しかし、総務省は、新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響等により、新スプリアス規格への移行に遅れが生じることが想定されるとして以下の経過措置を設けた。
※ 新スプリアス規格への移行期限延長の経過措置
総務省は、「新スプリアス規格への移行期限を当分の間延長」し、「旧スプリアス規格の無線機器は令和4年12月1日以降も、他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り使用できる」とする総務省令と関連告示を2021年8月3日付の官報で公布、即日施行とした。
※ 無線設備のスプリアス発射の強度の許容値等 ➡ 総務省電波利用
このようなことから、無線設備の全てを見直すことにし、変更申請書を添えて保証認定を受けることにしたが、前回の認定を受けてから何十年も経過している事もあり、申請書作成時に不明確な内容が多く、余計な時間を費やしてしまった。
他にも同じような方がいれば参考になると考え、空中線電力200W以下の変更内容を整理し、ここに記しておくことにする。
下記図は無線機器の変更申請(届)する場合は、その機器に対する保証認定の要不要により書類の提出先が違ってくる。そこで、一目で分かるように作成したチャート図である。
変更する無線機器次第で、保証認定が必要な場合は、認定業務実施するJARDまたはTSSを経由して総合通信局に提出するが、保証認定が不要な場合は直接地域を管轄する総合通信局に変更申請(届)書を提出することになる。
◎下記チャート内200W以下で難解な部分の解説
❶許可を受けた20Wを超える無線機に、附属装置と付加装置を同時に付けた場合は、保証認定の対象となる。(付加装置が対象)
※許可を受けたとは、総務大臣の許可を受けて使用できる無線機器を示す。(以下同様)
❷技術基準適合証明のない無線機に、附属装置と付加装置を同時、または個別に取り付けた場合も保証認定の対象となる。(無技適機が対象)
❸技術基準適合証明機の増設及び取替の変更申請と同時に、附属装置を変更申請する場合は保証認定の対象になるが、個別に行う場合は保証認定の対象にならない。
❹旧スプリアス規格での登録機種を使用する場合は、[スプリアス確認保証可能機種]に該当する機種であれば、JARDへスプリアス確認保証の申し込み手続きを取る必要がある。
※TSSでは、2018(平成30)年の秋からスプリアス保証認定を実施している模様である。
保証認定が不要な場合は、地域を管轄する総合通信局に変更申請(届)書類を直接提出する。
【 主な変更内容 】
❶技術基準適合証明機のみによる送信機の取替及び増設
❷無線設備に変更のない周波数、電波形式の変更
※上級資格取得等で追加する場合等。
❸許可を受けた送信機に、附属装置を取り付ける
※附属装置の解釈は、パケット、RTTY、FAX、SSTV等を示す。
❹許可を受けた附属装置を他の許可を受けた送信機と共有する場合
❺許可を受けた送信機に、20W以下の付加装置を取り付ける場合
※付加装置の解釈は、ブースターやトランスバーターを示す。
❻50Wを超える移動しない局の空中線の変更
※50W以下は提出不要。
❼既設局と無線設備の共用
※同常時場所で資格の操作範囲内に限る。
❽送信機、附属装置の撤去
❾アンテナの取替、増設、撤去
❿空中線電力が200Wを超える局が無線設備等の変更手続きする場合
※内容によっては変更検査を必要とする場合がある。
⓫氏名の変更
※先に無線従事者免許証の氏名訂正手続きが必要。
⓬住所変更
⓭移動する局の常置場所の変更
※現在免許を受けている総合通信局へ提出する。
⓮社団局の名称、代表者、構成員、定款等の変更
※変更内容に応じて、代表者変更届、定款、構成員名簿等を提出する。
⓯無線従事者免許証番号の変更
※上級免許取得の場合など変更のみに限る。
⓰呼出符号の変更
※旧コールサインを復活する場合。
◎その他、同時申請
❶再免許申請と変更申請
※両者の同時申請は不可能である。先に再免許の申請をして、免許状取得後に変更申請すること。
❷再免許申請と住所のみの変更
※再免許申請の提出期限が間近である場合は、住所のみの変更に限り再免許申請と併せて住所変更申請の同時申請が可能である。(両方の申請書を同封する)
【 申請方法と提出書類 】
◎電子申請を希望する場合は、[総務省電波利用電子申請・届出システム]から説明に従って手続きする。
※変更手数料は無料。
◎書面で希望する場合は、[地域を管轄する総合通信局]に次の書類を提出する。
※変更手数料は無料。
❶アマチュア局の無線設備等の変更申請(届)書 1通
❷無線局事項書及び工事設計書 1通
❸返信用封筒 1通
※送り先を記入し、定形郵便物25g以内の切手を貼る。(現在84円)
❹送信機系統図
※20W以下の送信機に、付加装置及び附属装置を取り付けた場合。
保証認定が必要な場合で、一般財団法人日本アマチュア無線振興協会(JARD)、またはTSS 保証事業部 アマチュア無線局の保証業務(TSS)を経由して、地域を管轄する総合通信局に提出する必要がある。
【 主な変更内容 】
❶技術基準適合証明機以外の送信機の増設及び取替
※JARL登録機種、自作機、外国製の無線機等。
❷技術基準適合証明機の改造及び付加装置の取付け
※空中線電力が20Wを超え200W以下で、技術基準適合証明の効力を失った場合。
❸許可を受けた送信機に付加装置の取付け
※空中線電力が20Wを超え200W以下の付加装置を取り付けた場合。
❹技術基準適合証明機と同時変更申請
※増設及び取替の変更申請と同時に付加装置及び附属装置の取り付けを変更申請する場合。
❺設置場所の変更
※移動しない局または、移動局から移動しない局へ変更する場合。
※技術基準適合証明機のみの場合も対象となる。
❻スプリアス確認保証
※すでに免許を受けている無線機が対象
・スプリアス確認保証が必要な無線機
①平成17年12月以前に免許を受け、現在も免許が継続している無線機
②[スプリアス確認保証可能機器リスト]に掲載の技術基準適合証明を受けた無線機で、平成17年12月以降に総合通信局等に直接申請して免許を受けて、現在も免許が継続しているもの
【 申請方法と提出書類 】
◎電子申請を希望する場合は、下記URLから説明に従って手続きする。
❶JARD:[ http://www.jard.or.jp/hosho/contents/guidance_03.html ]
❷TSS:[ https://www.tsscom.jp/hosho/hoshonegai/index.html ]
◎書面で希望する場合は、下記の住所へ変更に必要な書類を郵送する。
❶JARD
住所:〒170-8088 東京都豊島区巣鴨3-36-6 共同計画ビル5階
TEL:03-3910-7263 FAX:03-3910-7277
mail:hosho@jard.or.jp
HP_URL : 一般財団法人日本アマチュア無線振興協会 JARD
申請手数料:申請手数料について
スプリアス確認保証料:スプリアス確認保証料について
❷TSS
住所:〒101-0051 東京都千代田区神田神保町3-11-1 TSS株式会社保証事業部
TEL:03-6261-3686
mail:cqinfo@tsscom.co.jp
HP_URL : TSS 保証事業部 アマチュア無線局の保証業務
申請手数料:申請手数料について
◎書面で希望する場合、変更に必要な書類。
❶アマチュア局の無線設備の保証願書(変更) 1通
❷アマチュア局の無線設備等の変更申請(届)書 1通
❸無線局事項書及び工事設計書 1通
❹返信用封筒 1通
※送り先を記入し、定形郵便物25g以内の切手を貼る。(現在84円)
❺送信機系統図
※JARL登録機種以外の機種、改造機、自作機、送信機に付加装置を取り付けた場合等。(詳しくは、提出先に要確認)
※JARL登録機種は、[JARL登録機種10W~100W.pdf"]を確認すること。
変更申請(届)の作成上で、不明な点がある場合は、自己判断で作成するのではなく、書類の提出先に必ず問い合わせることが必要である。
全国で統一された変更案内書が出されている場合は問題ないと思うが、ここで記したアマチュア無線局の変更申請(届)は、地域を管轄する総合通信局及び保証業務担当の各々がそれぞれの変更案内書を出している。案内している法的な部分についての違いはないが、それぞれの変更案内書の比較および電話やメールで問い合わせしたところ、案内している内容や提出書類の有無などについて、若干の温度差があるように感じた。
申請書(届)提出後に、不備等があり[修正]や[再提出]などがあると時間のロスにつながり、楽しみにしているアマチュア無線の交信が先送りされてしまう。
私の経験から記すが、保証認定申請提出書類やその記入方法などに自信がない場合は、「JARD」に提出するのが賢明だと思う。
申請書類等に不備があった場合の両者の対応について記す。
「JARD」の場合は、早期に不備有りの連絡があり、訂正して再提出から10日間程度で「管轄総合通信局へ提出した」旨の完了の連絡が届く。おおむね3週間の期間を要する。
「TSS」の場合は、申請者からの問い合わせがなければ、不備有りの連絡が届くのは6カ月以上先になる。そこから再提出することになるが、完了の連絡は届かないため、申請者が管轄総合通信局へ問い合わせることになる。おおむね1年近くの期間を要する。不備がなければ2週間程度で管轄総合通信局へ提出されているが、完了の連絡はない。しかし、これらは保証業務規程に違反をしているわけではない。
不明な点がある場合は、迷わず問い合わせをして、不明点解消後に提出することは必須である。