超簡単で安定性の良いマイクアンプキットを組み立てる
市販されているアマチュア無線機は、マイクアンプを内蔵しているため、基本的にはマイクロフォン側でのマイクアンプは必要ないが、1台のマイクロフォンで数台の無線機を切り替えて運用するときなど、無線機側のマイクアンプを同一ゲインに調整することは困難なので、手元のマイクロフォン側でマイクゲインを微調整したいときがある。このようなときに使用する微調整用のマイクアンプを作る。
マイクアンプはゲインが高すぎると環境ノイズを拾いやすく、S/N比などの特性が悪化して、スプリアスの原因にもなり、交信相手だけではなく多くの人に迷惑をかけることになる。ここで使用するマイクアンプは、ゲインが必要以上に上がり過ぎないことが重要である。
組み立てたマイクアンプキットは超簡単で安定性の良い、教科書に載っているような基本回路で、トランジスタ1石エミッタ接地増幅回路を使用したキャリブレーションのマイクアンプキットである。回路はシンプルでパーツの数も少なく、半田付けの経験の少ない初心者でもごく簡単に自作できる成功率の高いマイクアンプキットである。
キャリブレーション ➡ http://calibration.sakura.ne.jp/
※ キャリブレーションのマイクアンプキットは、「在庫なし」になっている場合があるが、前記したようにパーツ数が少ないために回路もシンプルである。また、これらのパーツは容易に入手でき自作も簡単にできるため、このまま掲載することにする。
キャリブレーションHPのマイクアンプ ページの引用
● アマチュア無線用の送信機等で、マイクゲインがチョット足りないときに・・・2SC1815を使用したアンプです。
● このアンプの出力は、オーディオ機器のライン入力のレベルには達しません。
● 回路は簡単なので、引き出しや、部品箱のジャンク部品でも作製可能です。
● 電源は、1.5V~14Vまで使用できます。
--- マイクアンプ ➡ マイクアンプ ---
以下に、マイクアンプキットのパート内容およびその画像を示す。
・トランジスタ 2SC1815 × 1個
・抵抗 1KΩ × 1個、 2.2KΩ × 1個、 100KΩ × 1個
・電解コンデンサ 1μF × 1個、 10μF × 1個
・半固定VR 200Ω × 1個
・基板 CAL基板3P × 1枚
・回路図および組み立て図 × 1枚
以下図面の入力側の2.2KΩの抵抗は、直接コンデンサマイクを取り付ける場合に必要だが、コンデンサマイクを取り付けない場合は必要ない。
なお、取り付けない場合は入力側の1μFの電解コンデンサの極性を図面とは逆に、入力側をマイナス(-)極性にする必要がある。
以下の波形は、上記アンプ回路をシミュレーションした画像である。
作動電圧はDC3V、音声周波数は300Hz、マイク入力電圧は10mV、エミッタ抵抗は100Ω(1/2)でシミュレーションしたものだが、綺麗な波形になっていることが判る。マイク入力電圧10mV(黄色の波形)に対して、マイク出力電圧(緑の波形)は、約8倍(18dB)の80mVに増幅されていることが見て取れる。
予備のマイクアンプとして無線機に使用するには、十分なキットであることが分かる。
※ エミッタ増幅回路の出力電圧は、入力電圧に対して反転した増幅波形が現れる。
パーツは足の長さを必要な長さに切り取り、銅箔面に直接半田付けする。
半固定VRの200Ωは、ゲイン調整用なので外部で調整する場合は取り付けない。
アルミケースは、マイクアンプのキットには付属していないので別途用意する。
左画像は半固定VRを取り付けたもので、右画像は半固定VRを外し、外部調節するのでジールド線で引き出しVRを取り付ける。
ここで使用したアルミケースは、TAKATHIのYM-40 大きさは( W30 × D40× H22 )なるべく小さなケースを使用した方が、後で本体のケースに納めやすい。ケース上部の穴は、基板に半固定VRを取り付けたときの調整用に開けた穴である。
左画像は正面で、右画像は背面である。
このマイクアンプキットの電圧は、DC1.5VからDC14Vまでと電圧範囲が広いのも特徴で、乾電池1本で十分駆動できる。実際に使用するときは無線機にもよるが、200Ω(A)のVRを1/4程度(9時方向)回して運用している。
それでは、実際の運用時の波形をシミュレーションしてみる。
作動電圧はDC3V、音声周波数は300Hz、マイク入力電圧は10mV、エミッタ抵抗は150Ω(VR1/4回転)とすると、以下画像の波形のピークは、60mVになっていることが見て取れるので、約6倍(16dB)程度で運用していることが推測される。
このマイクアンプキットのゲイン調節は基板上の半固定VRで調節するように作製されているが、ここでは、ボックスパネルでゲイン調節ができるように、200ΩのVRを外付けに変更した。しかし、送信中にボックスのVRを回すとVRの擦れる音が出て電波に乗ってしまう。
送信中にゲイン調節しなければこのままでも問題はないが、送信中に相手局からレポートをいただきながら調節することもあるため、若干の回路変更する。変更は、エミッタ抵抗の200ΩVRを取り外し、安定性を良くするためにエミッタ抵抗とパスコンでGNDに落とす。更に入力側にゲイン調整用のVRを取り付ける。
入力側にVRを取り付ける前に、アンプの出力側に出力調整用のVRを取り付けてみたが、出力インピーダンスが変化するために、無線機次第ではマイクゲインを3/4程も上げなければ変調のかからない無線機もあった。
※ 参考
左側が変更前、右側が変更後の回路図(赤枠内)で、変更後のエミッタ抵抗は68Ωおよびパスコンは22μFとし、入力調整用は1μFのカップリングコンデンサを介して10KΩのVRを追加する。
以下の波形は、上記変更後の回路をシュミュレーションしたものであり、作動電圧はDC3V、音声周波数は400Hz、マイク入力電圧は10mVで、入力調整用10KΩのVRを下記のように変化(回転)させると、電圧出力波形のピークはおおむね次のように変化する。
❶ 9.9KΩ ➡ 30mV ➡ 3倍 (10dB)
❷ 9KΩ ➡ 50mV ➡ 5倍 (14dB)
❸ 7KΩ ➡ 70mV ➡ 7倍 (17dB)
❹ 5KΩ ➡ 120mV ➡ 12倍(22dB)
❺ 3KΩ ➡ 190mV ➡ 19倍(26dB)
❻ 1KΩ ➡ 260mV ➡ 26倍(28dB)
この結果はあくまでも参考程度としてほしい。
現在もこのマイクアンプを使用しているが、電流容量もわずかで乾電池も長持ちする。また、一々無線機のマイクゲインVRまで手を伸ばすことなく、手元の同一場所でゲインの微調整ができて交信が楽しめる。
このアンプをコントロールするために格納するケースについては以下を参照。